「スキマワラシ」を読ませていただいて

著者:恩田 陸
出版:集英社文庫

燈火の感想

先ずは率直な感想から。
始めは、まったく話の内容が掴めませんでした。それを分かっているように、説明が入る構成なのですが、もう少し本題に入る展開が早いと良かったのかな?と思います。

辛口で書いてしまうと、全体的に間延びして感じる作品です。濃淡や抑揚があまりなく、スキマワラシについての描写も弱いと感じてしまいました。主人公の異能表現に囚われ過ぎたのか。それと、物語の軸が分かり辛かったのだと思います。

伏線と回収はできているものの、物語の本線が「ぼやけている」ので、感動が今一に感じてしまう。感情移入できる登場人物が登場するわけでもなく、タイトルになっている「スキマワラシ」についても、ふわっとしている。

悪いところばかりでは無いですよ。今回の異能については、面白い発想だったと思うのです。ちょっと宮崎駿監督の「トトロ」などの作品を思い浮かべてました。トトロの見える子供達と、何も見えない大人達。

明らかな違いは、やっぱり「ぼやけている」かな。「トトロ」は、物語の中盤からしっかりと「トトロ」と子供達を中心に物語が進んでいきます。そこから、家族愛に繋がっていく展開が描かれてました。最後も「トトロ」とその仲間たちが活躍してくれますよね。

この作品のゴールはネタバレになるので書きませんが、何かが足りないと感じてしまうのです。もう一度読めば、もしかしたら変わるのかも知れませんが。もう少し「スキマワラシ」の神秘性を描いて欲しかったなと思います。