「さよならごはんを今夜も君と」を読ませていただいて

著者:汐見 夏衛
出版:幻冬舎文庫

燈火の感想

先ずは率直な感想から。
とても分かりやすいストリーで、疲れている時に読むと心が和む。そんな印象を受けました。
実際に仕事が立て込んでいた時に読んでいたので、軽く読めて丁度良かったです。寝室で寝る前に読むとぐっすり眠れます。そんな心を落ち着かせてくれる様な作品でした。

もし映像化をするのであれば、テレビドラマだと創りやすいのだろうなと思う作品ですが、私が台本を書かせていただくのであれば、舞台にしてみたい。登場人物の世界がそれぞれ小空間なので、その空間を上手く演出できたら面白い作品に仕上がりそうです。

肝心の物語についてですが、少し中途半端な感じがします。けれど、それが良いのかも知れません。食事処を舞台に用いていますが、料理については特別グルメな訳でもなく、必ずしも物語と一致した考え抜かれたメニューと言うことも有りません。何故ここで、この料理なのだろうかと疑問をもつシーンも有りましたが、その中途半端さが私には心地良かったです。確かに、食事は美味しいと思えれば、食べて幸せに思えれば何でも良いのですよね。

更に言えば、誘い込まれるお店の印象も中途半端だし、店主の描き方もフワッとしている。二作目に繋げることが目的だったとしても、そこまで次を読みたいと思わないのは、店主の魅力が薄いからかも知れない。もう少しだけ、登場人物か、お店か、料理について、味付けの濃い作品だったら完成度の高い魅力的な作品になったのだろうなと思います。燈火は薄味が好きなので満足ですけれどね。